運動不足がEDにつながるって本当?
運動不足はEDの危険因子のひとつです。過去に行われた研究の中には、EDと運動不足の関連を示すものがあります。具体的には、運動不足がEDの発症に関与している可能性が示唆されています。
運動不足が続くと、消費エネルギーが減少して肥満が引き起こされる点もポイントです。内臓脂肪がたまると、傷ついた血管の修復を促す善玉アディポサイトカイン(アディポネクチン)の分泌が減少して、血管を傷つける悪玉アディポサイトカイン(PAI-1、TNF-α、レプチンなど)の分泌が増えます。したがって、運動不足に伴う内臓脂肪型肥満は、動脈硬化を促進させやすくなります。
動脈硬化は、EDの重要な危険因子です。動脈硬化は、血管が厚く・硬くなった状態といえるでしょう。勃起はペニスに大量の血液が流れ込むことで成立します。血管が弾力性を失うと、十分な血液を確保できなくなるため勃起しても硬くならない、勃起しないなどの状態に陥ります。動脈硬化は、中高年に多いEDの原因です。予防するため、運動不足や肥満に注意しなければなりません。
参考に、浜松町第一クリニックが40~59歳の男性2,000名を対象に実施した調査の結果を紹介します。同調査でわかった「定期的な運動とEDの関係」は次の通りです。[1]
運動頻度 | EDではない | 軽度ED | 中等度ED | 重度ED |
全くしていない | 59.4% | 20.4% | 13.1% | 7.1% |
月1回未満 | 63.5% | 20.3% | 13.96% | 2.3% |
月1~2回 | 62.9% | 22.4% | 11.9% | 2.9% |
週1回 | 60.8% | 22.8% | 11.1% | 5.3% |
週2回以上 | 68.9% | 18.1% | 8.5% | 4.5% |
運動を全くしていない群は「EDではない」割合がやや低くなっています。また、運動を「週2回以上」している群は「EDではない」割合が他の群よりも高くなっています。週2回以上の運動で、EDを遠ざけられる可能性があるといえるでしょう。
EDの改善におすすめの運動
EDを予防・改善したい方は、運動不足の解消に努めるとよいかもしれません。具体的に、どのような運動に取り組めばよいのでしょうか。予防や改善に勧められる運動を紹介します。
有酸素運動
有酸素運動は、筋肉を働かせるエネルギーとして糖質や脂肪と一緒に酸素を使用する運動です。負荷の軽い運動(長時間続けられる運動)と考えればよいでしょう。有酸素運動の例として以下のものがあげられます。
【有酸素運動】
- ウォーキング
- ジョギング
- スイミング
- エアロビクス
- サイクリング
有酸素運動は、エネルギー源として脂肪を使用するため体脂肪の減少やLDLコレステロール、中性脂肪の減少などを期待できます。もちろん、血流を改善して筋力の低下を防ぐ効果も期待できるでしょう。EDの危険因子とされる、動脈硬化・糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を遠ざけられる点が魅力です。
脂肪燃焼効果は、有酸素運動を開始してから20分程度で高まると考えられています。運動不足の解消に加えて、脂肪の燃焼を目的とする場合は、長時間続けやすいウォーキングなどに取り組むとよいかもしれません。
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筋トレ
筋肉に繰り返し負荷をかけるトレーニングの総称です。レジスタンス運動と呼ばれることもあります。筋トレの基本的な目的は、筋肉をつけること、筋力を高めることなどです。筋トレの例として以下のものがあげられます。
【筋トレ】
- 腕立て伏せ
- 腹筋運動
- 背筋運動
- スクワット
- ダンベル運動
筋トレで筋肉をつけると、糖尿病の原因であるインスリン抵抗性を改善できる可能性があります。糖尿病もEDの重大な危険因子のひとつです。動脈硬化を促進させるとともに神経障害を引き起こす恐れがあります。また、筋トレには男性ホルモンの分泌を促す効果も期待できます。男性ホルモンの分泌量は加齢とともに低下するため、中高年はこの影響でEDに悩まされることがあります。
ただし、筋トレは筋肉や関節に大きな負荷をかけます。運動習慣のない方は、体力にあわせてスタートすることが大切です。EDを予防するため鍛えたい筋肉などは、後ほど詳しく解説します。
開脚ストレッチ
開脚ストレッチもEDの予防や改善に役立つ可能性があります。ストレッチで筋肉を伸ばすことにより、股関節周りの血流を改善できるためです。基本的な取り組み方は次の通りです。
【取り組み方】
- 床に座って足を伸ばす
- 爪先を天井に向けて足を左右に開く
- 床に手をつく
- 背中を丸めないように気をつけながら身体を前に倒す
- 気持ちがよい程度の場所で前屈をとめて呼吸を繰り返す
開脚ストレッチ中は呼吸をとめないように気をつけます。足を開くと背中が丸まってしまう場合は膝を軽く曲げるとよいでしょう。開脚ストレッチも、無理のない負荷から始めることが大切です。
ヨガ
ヨガもEDの予防や改善に役立つ可能性があります。リラックス効果や血流改善効果などを期待できるためです。EDに勧められるポーズとして、バッダコナーサナがあげられます。具体的な取り組み方は次の通りです。
【取り組み方】
- 床に座って両足を伸ばす
- 膝を曲げて左右の足の裏を合わせる
- 骨盤を立てる
- 気持ちがよい程度の場所で前屈をとめて呼吸を繰り返す
ヨガも無理をしすぎないことが大切です。また、正しいポーズを身に着けることも欠かせません。専門的な知識を身につけたい方は、ヨガ教室などで指導を受けるとよいでしょう。
ED改善のために鍛えたい筋肉
ここからは、EDの予防・改善のために鍛えたい筋肉を紹介します。
骨盤底筋(球海綿体筋)・恥骨尾骨筋
骨盤底筋群は、骨盤の底についている複数の筋肉です。この中には、勃起に深く関わっている筋肉があります。そのひとつとしてあげられるのが球海綿体筋です。球海綿体筋は、精液を押し出すとともにペニスに流れ込んだ血液が流れ出ないようにする働きを担っています。恥骨尾骨筋も勃起に関わっている筋肉のひとつです。この筋肉は、静脈を締めて海綿体に流入した血液を押しとどめる働きを担っています。同様に、坐骨海綿体筋も勃起に関わっています。坐骨海綿体筋の働きは、ペニスの付け根を圧迫して勃起を持続させることです。いずれも重要な働きを担っているため、これらの筋肉が障害されると勃起に問題が生じてしまいます。EDに悩む方が重点的に鍛えたい筋肉といえるでしょう。
大腿四頭筋・大腿二頭筋
大腿四頭筋は太ももの前面についている4つの筋肉の総称です。具体的には、大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋で構成されます。主な役割は、膝を進展させることです。大腿二頭筋は太ももの後面についている筋肉です。大腿二頭筋長頭と大腿二頭筋短頭で構成されます。主な役割は、膝を曲げることです。また、筋肉には、血液を循環させる働きもあります。大腿四頭筋・大腿二頭筋とも大きな筋肉であるため、全身の血流に小さくない影響を与えています。勃起には良好な血流が欠かせないため、これらの筋肉を鍛えることが重要と考えられているのです。
大臀筋
お尻についている大きな筋肉です。主に股関節の進展に関わっています。大殿筋も下半身の血流を促す働きがあります。ペニスの血流アップを目指す方が、鍛えたい筋肉のひとつです。また、大殿筋は腰の前後(ピストン)運動とも深く関わっています。体力面の衰えが目立つ方が鍛えておきたい筋肉といえるでしょう。勃起・体力の両面から、持続力アップを目指せます。
ED改善におすすめのトレーニング方法
ここからは、EDを予防・改善するために取り組みたいトレーニングを紹介します。
骨盤底筋体操(ケーゲル体操)
骨盤底筋体操は、女性の尿漏れだけでなく男性のEDにも効果的です。勃起に関わる複数の筋肉を鍛えられます。基本的な取り組み方は次の通りです。
【取り組み方】
- 仰向けになり足を肩幅程度に広げる
- 膝を立ててリラックスする
- 尿道・肛門を中心にペニス周辺の筋肉を締め上げる
- 3の状態を10秒程度キープする
- 2に戻って、再びリラックスする
- 1分を目安に2~5を繰り返す
以上の運動を、1日10セットを目標に取り組みます。
スクワット
スクワットは、下半身の筋肉を効率よく鍛えられるトレーニングです。ここでは、主に大腿四頭筋を鍛えるスクワットを紹介します。基本的な取り組みは次の通りです。
【取り組み方】
- 肩幅程度に足を開いて立つ
- つま先と膝の向きを同じにする
- 腕を胸の前で組む
- 後方の椅子に腰かけるように膝を曲げる
- 2秒程度かけながら床と太ももを平行にする
- 2秒程度かけながら3の状態へ戻る
- 3~6を繰り返す
運動習慣のない方は、1セット10~20回を目安に取り組みましょう。慣れてきたら1セット30回にします。筋肉と関節にかかる負荷が大きいため、体力にあわせて行うことが大切です。
肛門を締めるトレーニング
肛門を締めることによっても、勃起に関わる骨盤底筋群を鍛えられます。ポイントは、確実に勃起に関わる筋肉を刺激することです。確認方法は次の通りです。
【確認方法】
- リラックスして椅子に座る
- 手のひらを上に向けて股の間に入れる
- 肛門を締めて圧を確認する
肛門を締めたときに圧を感じることができれば骨盤底筋群を刺激できています。この感覚を忘れずに肛門を締めれば、骨盤底筋群のトレーニングになります。立った状態、座った状態で取り組めるため、忙しい方におすすめです。
大腿筋のトレーニング
続いて、大腿二頭筋を鍛えるトレーニングを紹介します。手軽に取り組めるトレーニングとして、スタンディングレッグカールがあげられます。取り組み方は次の通りです。
【取り組み方】
- 肩幅程度に足を開いて立つ
- 上半身を少しだけ前に倒して片方の足の爪先を浮かせる
- 爪先を浮かせた足の膝をできる限り曲げる(かかとを身体の後ろ側に引き上げる)
- 2の状態に戻る
- 2~4を繰り返す
- 反対の脚も同様に行う
膝の位置をできるだけ動かさないようにすることがポイントです。
股関節周りのトレーニング
股関節周りのトレーニングもEDの予防や改善に役立つ可能性があります。ここでは、中殿筋のトレーニングを紹介します。取り組み方は次の通りです。
【取り組み方】
- 横向きに(片方の方を下にして)寝て上半身を伸ばす
- 腰を動かさないように意識しながら上側の足を天井方向へ引き上げる
- 腰よりやや高い程度までかかとを引き上げたら1の状態に戻る
- 2~3を繰り返す
ポイントは、かかとを高く上げすぎないことです。1セット20~30回程度を目標に上記のトレーニングを行います。
運動と一緒に取り入れたいED予防法
運動に他の対策を組み合わせると、EDを予防・改善しやすくなる可能性があります。並行したい取り組みは次の通りです。
栄養バランスの良い食事を心がける
食生活が乱れていると、EDの危険因子である生活習慣病や肥満のリスクが高まります。運動に取り組む方は、食事の内容にも注意しましょう。意識したいポイントは次の通りです。
【ポイント】
- 炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維をバランスよく摂る
- 腹八分目を心がける
- 塩分や動物性脂肪の摂りすぎに注意する
残念ながら「これさえ食べればEDが治る」といった食べ物はありません。健康的な食生活を心がけることが大切です。
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質の良い睡眠時間を確保する
睡眠不足になると下垂体の働きが低下して、男性ホルモンの分泌量が減少します。運動と並行して、十分な睡眠時間を確保すること、睡眠の質を改善することが重要です。十分な睡眠時間の目安は人により異なりますが、一般的には6~8時間程度と考えられています。睡眠の質は以下の取り組みで向上する可能性があります。
【ポイント】
- 床後、カーテンを開けて朝日をしっかり浴びる
- 就寝の1~2時間前に温めのお湯で入浴する
- 眠気を感じてからベッドに入る
運動習慣も睡眠の質に良い影響を与えます。
飲酒量をほどほどに抑える
適度な飲酒には、リラックス効果を期待できます。EDの予防に役立つ可能性があるといえるでしょう。しかし、飲酒量が増加すると鎮静効果が強く現れます。勃起に悪影響を及すため、飲みすぎには注意しなければなりません。
また、飲酒には入眠にかかる時間を短縮する働きもあります。一方で、睡眠後半部分を障害することも知られています。トータルで考えると睡眠の質を低下させてしまうため、お酒の飲み方には十分な注意が必要です。
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禁煙する
喫煙習慣がある方は、運動とあわせて禁煙または減煙に取り組むことが大切です。喫煙には、動脈硬化を促進する働きや交感神経を刺激して血流を妨げる働きなどがあります。勃起に悪影響を与える代表的な取り組みといえるでしょう。禁煙や減煙が難しい場合は、禁煙補助薬を活用できます。
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運動はEDの予防や改善に欠かせない取り組み
ここでは、運動とEDの関係を解説しました。運動不足はEDの危険因子です。また、肥満や動脈硬化を招き、EDを悪化させる恐れもあります。勃起しにくくなったなどと感じている方は運動に取り組みましょう。効果的な運動として、ウォーキングやジョギングをはじめとする有酸素運動があげられます。筋トレを並行して行うとより効果的です。ただし、効果を実感できるまで時間がかかることが一般的です。すぐに始められる手軽な方法を探している方は、精力剤を試してみるとよいかもしれません。興味のある方は、専門薬局として35年以上の歴史がある「あかひげ薬局」にご相談ください。
[1]出典:浜松町第一クリニック「ED(勃起不全)を自力で治すには」
https://www.hama1-cl.jp/about_ed/improve.html
内原 茂樹 / Uchihara Shigeki
株式会社ワン・ツー創業者
あかひげ薬局創業者
<略歴>
芳香園製薬に入社し、各地支店長を歴任したのちに、独立。
1987年に愛知県名古屋市に精力剤専門店あかひげ薬局を創設。
数多くのTV・ラジオ番組に出演
「おとなの子守唄」「艶々ナイト」「今夜もハッスル」などに出演。
<主な著書>
「中高年のための気持ちいいセックス」(1997年10月、現代書林)
「誰にも聞けなかった精力剤完全ガイド」(2001年3月、現代書林)
<メディア>
・艶々ナイト(テレビ埼玉)
・今夜もハッスル(サンテレビ) 等