勃起の仕組みとEDの原因
EDの原因は、勃起の仕組みを把握しておくと理解しやすくなります。ペニスは、お腹側に位置する左右一対の陰茎海綿体、尿道側に位置する尿道海綿体、これらを覆う白膜などで構成されます。ちなみに、海綿体は細い血管が網目状に張り巡らされたスポンジ状の組織です。勃起は以下の仕組みで起こります。
【仕組み】
- 性的な刺激を受けて脳が興奮する
- 性的興奮が脊髄神経を介してペニスに伝えられる
- 陰茎動脈から一酸化窒素(NO)が放出される
- 陰茎海綿体内でサイクリックGMPが増加する
- 陰茎深動脈などがゆるむ
- 平滑筋が弛緩してペニスに大量の血液が流れ込む
- 6により圧力が高まりペニスが勃起する
- 白膜がふくらみ静脈を圧迫する
- 8により血液が押し留められて勃起が持続する
性的刺激を受ける前は、血管・平滑筋とも収縮しているためペニスに大量の血液が流れ込むことはありません。性的刺激を受けた脳からの刺激を受けて勃起は起こるのです。
ただし、性的刺激を受けると必ず勃起するわけではありません。以上の仕組みを見てわかる通り、勃起には神経と血管が関わっています。これらに何かしらの問題が生じると、性的刺激を受けても勃起しないことや勃起はするもののそれを維持できないことがあります。原因としてあげられるのが、身体の問題・心の問題・薬剤の副作用です。例えば、仕事のストレスが原因で性的刺激をうまく伝えられなくなり勃起しなくなることもあります。また、これらの問題が重複していることも少なくありません。原因についてはこの後の章「【原因別】EDの4つの種類」で詳しく解説します。
EDの基準
第4回コンサルテーション会議で、EDは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または(and/or)維持できない状態が持続または(or)再発すること」と定義されています。[1]ポイントは、まったく勃起しない状態だけでなく、勃起はするものの十分な硬さにならないケースや途中で萎えてしまうケースも含むことです。これらにより満足な性行為を行えない状態をEDといいます。一般的なイメージと定義が異なるため、該当する方は想像以上に多いといえるでしょう。
浜松町第一クリニックが20~79歳の男性6,000名を対象に実施した「ED(勃起不全)有病者数調査2022」によると、軽度・中等度・重度のEDに悩む男性の合計は1,674万人です。各年代に占める中等度以上の割合は、40~44歳が10.2%、45~49歳が13.4%、50~54歳が15.5%、55~59歳が20.1%、60~64歳が23.4%、60~69歳が33.6%となっています。全年代に占める中等度以上の割合は20.5%です。[2]男性にとって身近なトラブルといえるかもしれません。
EDのセルフチェック方法
自身の状態がEDに該当するか気になる方は多いはずです。参考に、問診票のひとつとして医療機関で用いられている国際勃起機能スコア(IIEF5)を紹介します。以下の5つの質問に5段階で回答してください。対象となる期間は直近の6カ月です。
質問 | 回答 | スコア |
勃起を維持する自信の程度は? | とても低い | 1 |
低い | 2 | |
普通 | 3 | |
高い | 4 | |
とても高い | 5 | |
性的刺激で勃起した際、挿入できる硬さになる割合は? | まったく、またはほとんどない | 1 |
たまに | 2 | |
ときどき | 3 | |
おおかた | 4 | |
毎回、ほぼ毎回 | 5 | |
挿入後、勃起を維持できる割合は? | まったく、またはほとんどない | 1 |
たまに | 2 | |
ときどき | 3 | |
おおかた | 4 | |
毎回、ほぼ毎回 | 5 | |
セックスを終えるまで勃起を維持できる難しさは? | 非常に難しい | 1 |
かなり難しい | 2 | |
難しい | 3 | |
やや難しい | 4 | |
難しくはない | 5 | |
満足できる成功を行える割合は? | まったく、またはほとんどない | 1 |
たまに | 2 | |
ときどき | 3 | |
おおかた | 4 | |
毎回、ほぼ毎回 | 5 |
以上の合計点数で評価します。22点以上はEDではない、17~21点は軽度、12~16点は軽度~中等度、8~11点は中等度、5~7点は重度と考えられます。
勃起硬度測定評価EHSも問診票として活用されています。こちらはペニスの硬さを5段階で評価するツールです。食べ物で硬さの程度を評価できるためわかりやすいでしょう。
【評価】
- 0:大きくならない
- 1:大きくなるが硬くはない(硬さの程度:こんにゃく)
- 2:硬いが挿入に十分ではない(硬さの程度:みかん)
- 3:挿入に十分な硬さだが完全に硬くはない(硬さの程度:グレープフルーツ)
- 4:完全に硬く硬直している(硬さの程度:リンゴ)
0~2はED、3でセックスに支障が生じている場合は治療が必要と考えられます。ただし、国際勃起機能スコア(IIEF5)・勃起硬度測定評価EHSとも、自己評価だけでは正確な診断を行えません。ここで出た結果は参考程度です。診断を受けたい方は医療機関を受診してください。
【原因別】EDの4つの種類
EDは原因により4つの種類にわかれます。種類が異なれば改善方法なども異なります。どのタイプに分類されるか見極めることが重要といえるでしょう。それぞれの概要は以下の通りです。
器質性ED
身体的な問題で引き起こされるものを器質性EDといいます。考えられる原因はさまざまです。中でも注意したいのが動脈硬化といえるでしょう。動脈硬化は、何かしらの原因で血管が硬くなった状態です。生活習慣のほか加齢の影響でも進行します。血管内皮機能が障害されるうえ、血液の通り道も狭くなるため、進行すると勃起に悪影響が及びます。
神経障害にも注意が必要です。性的興奮をうまく伝えられなくなってしまいます。身近な原因としてあげられるのが、糖尿病性神経障害や脳卒中です。糖尿病性神経障害は、高血糖状態が長く続くことで神経が障害される病気、脳卒中は血管が詰まる、破れることで脳が障害をされる病気です。また、事故や手術(例えば、前立腺がんの手術)で神経や血管が損傷することもあります。
内分泌機能の低下も原因になりえます。中高年を中心にかかわりが深いのが男性ホルモン値の低下です。勃起をはじめとする男性機能に悪影響を及ぼす恐れがあります。男性ホルモン値は加齢とともに低下します。
心因性ED
身体的な問題ではなく、心理的な要因、精神的な要因で引き起こされるEDです。これらにより、性的興奮をペニスへうまく伝えられなくなります。したがって、勃起しない、途中で萎えるなどのトラブルが生じるのです。ただし、身体の機能に問題はないため、朝勃ちは正常に起こります。また、オナニーも基本的には問題なく行えます。
心因性EDの原因は、現実心因・深層心因・精神疾患にわかれます。現実心因は、日常生活で生じるストレスと考えればよいでしょう。具体的には、セックスに対する不安、勃起に関する悩み、仕事の問題、家族関係の問題などがあげられます。深層心因は、心の奥に潜んでいる不安や怒りなどです。幼少期の経験やセックスに対する嫌悪感などがあげられます。本人ですら自覚していないこともあります。現実心因よりも解決は難しいといえるでしょう。精神疾患はうつ病をはじめとする心の病気です。性欲減退を招き、性的興奮も生じにくくなります。厚生労働省によると、心の病気の患者数は増加しています。[2]EDと同時に精神的な不調を感じている場合は注意が必要かもしれません。
混合性ED
身体の問題、心の問題、薬剤の影響が重複して引き起こされるEDです。例えば、動脈硬化で勃起しにくくなったことを気にしすぎて完全に勃起しなくなる、糖尿病で勃起しにくくなっているところに仕事のストレスが加わり症状が悪化する、薬剤の影響で勃起しなかった経験がトラウマとなりその後も勃起しなくなるなどが考えられます。4種類の中で最も多いタイプといえるでしょう。特に、中高年で多く見られます。持病を抱えているケースが多いうえ、仕事や家庭のストレスも大きくなるからです。ただし、問題が複雑に絡み合っているため原因の特定は簡単ではありません。したがって、解決も難しいといえます。
薬剤性ED
服用している薬剤の影響で引き起こされるEDです。リスクがある薬剤として、降圧薬・抗うつ薬・前立腺肥大症治療薬・非ステロイド性抗炎症薬などがあげられます。ただし、降圧薬は薬剤の影響なのか、高血圧の影響なのかはっきりとわかっていません。抗うつ薬(セロトニン取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬)のED発生率が高いと考えられている点も押さえておきたいポイントです。うつ病を発病すると性欲が低下するため影響に気づかないこともあります。病状が回復してセックスを再開してから気づくケースが多いようです。これらのほかにも、EDを引き起こす恐れがある薬剤は存在します。何かしらの薬剤を服用する場合は、副作用を確認しておきましょう。
器質性EDの改善方法
器質性EDの基本的な改善方法は以下の通りです。
①原因となっている疾患を治療する
最初に取り組みたいのが、原因になっている疾患の治療です。考えられる原因は多岐にわたります。具体的には、動脈硬化、糖尿病、高血圧、男性ホルモン値の低下などがあげられます。したがって、はっきりとした原因がわからない場合は、医療機関で検査を受けて特定しなければなりません。そのうえで、医師の指示に従い治療を継続することが重要です。ただし、原因疾患の治療を始めたからといって、症状がすぐに改善するわけではありません。治療を継続しても大きな変化を実感できないこともあります。しかし、疾患を放置することはおすすめできません。健康上の問題が生じるほか、EDの症状も悪化する恐れがあるからです。EDが疾患の初期症状ということもあります。気になる点がある方は医療機関を受診しましょう。
②生活習慣を見直す
並行して取り組みたいのが生活習慣の見直しと改善です。生活習慣の乱れは、器質性EDを引き起こす動脈硬化・糖尿病・高血圧などのリスクを高めます。EDが肥満と密接に関係している点も見逃せません。過去に行われた調査で、体格指数(BMI)の上昇とともにEDのリスクも高まることが示されています。暴飲暴食や運動不足などが続いていると、勃起に関する問題を抱えやすくなるといえるでしょう。具体的な改善策は、この後の章「今日から自分で始められるED改善方法」で解説します。
③血管再生治療を行う
医療機関で、新しい毛細血管の産生を目指せる治療を受けることもできます。具体的には、低出力の衝撃波をペニスに照射する治療です。細胞増殖因子が放出されるため、古い内皮細胞が再生するとともに新しい毛細血管が産生されます。何かしらの理由でED治療薬を服用できない方でも取り組める点が魅力です。ペニスに薬液を直接注入して、強制的に勃起させるICI治療も有効です。この方法であれば、性的刺激の有無にかかわらず勃起します。主にED治療薬が効かないケースで用いられています。
心因性EDの改善方法
心因性EDの基本的な改善方法は以下の通りです。
①パートナーに悩みを打ち明ける
セックスのときに勃起しないと、パートナーとの関係は悪化しがちです。男性は「次もうまくいかなかったらどうしよう」「パートナーに情けないと思われているはず」、女性は「自分に魅力がないのでは」「浮気しているのでは」などと考えることが少なくありません。勇気をもって悩みを打ち明けると、気持ちのすれ違いを防げます。少なくとも「次もうまくいかなかったらどうしよう」などの不安は軽減するでしょう。
また、改善に向けてパートナーに協力を求めやすくなります。例えば、スキンシップだけにとどめて関係性を構築する、2人で行うトレーニングに取り組むなどが考えられます。ただし、協力してくれるパートナーの負担には注意が必要です。感謝の気持ちを伝える、挿入以外の方法で満足させるなど、関係性を維持する取り組みが必要になります。
②ストレスを軽減させる
心因性EDの主な原因はストレスです。過度なストレスがかかることで、性的刺激をペニスへ上手く伝えられなくなります。したがって、ストレスを軽減させることが重要です。原因になるストレスは、性的な悩みだけに限られません。仕事のストレスや、家庭内のストレスなども問題を引き起こします。基本の取り組みは、ストレッサーから離れることです。例えば、趣味に没頭して嫌なことを忘れられる時間をつくる、旅行に出かけて環境を変えてみるなどが考えられます。ストレッサーが明確な場合は、これらに取り組んでみるとよいかもしれません。
③心理カウンセリングを受ける
心理カウンセリングも有効に働くことがあります。具体的には、EDを引き起こしている心の働きにアプローチして症状の軽減を試みます。必要があればパートナーと一緒に心理カウンセリングを受けることも可能です。また、改善を目指して心理カウンセリング以外の心理療法を用いることもあります。具体的な介入方法はさまざまです。まずは、専門家に相談するところから始めるとよいでしょう。
④治療薬や精力剤を服用する
ED治療薬や精力剤を服用することもできます。ED治療薬として用いられているのがPDE5阻害薬です。名称の通り、PDE5と呼ばれる酵素の働きを阻害します。PDE5は、平滑筋の弛緩を促すサイクリックGMPを分解する酵素です。つまり、陰茎海綿体へ血液を留めることにより勃起を促します。PDE5阻害薬には複数の選択肢があります。基本的な働きは同じですが、作用時間などに違いがあるため目的に合わせて選択することが重要です。
精力剤は、男性機能に関するトラブルの改善を目指す医薬品などを指します。具体的な働きは製品で異なります。性ホルモンを配合した内服薬・塗り薬を強精剤、身体に必要な栄養素や特定の成分を配合したものを強壮剤、自律神経・中枢神経に働きかけて勃起を促すものを勃起薬といいます。医療機関を受診しにくい方は、精力剤を試してみてはいかがでしょうか。
混合性EDの改善方法
混合性EDには、複数の原因が存在します。改善したい場合は、原因を見極めて、ひとつずつに対処していく必要があります。例えば、器質性EDと心因性EDが重複しているのであれば、疾患の治療を受けつつ、心理カウンセリングも受けるなどが考えられるでしょう。できるだけ早く対処することも大切です。勃起しにくい状態を放っておくと、失敗を繰り返して自信を失い、状況が悪化してしまう恐れがあります。
薬剤性EDの改善方法
服用している薬剤の影響が疑われる場合は、勃起しにくくなっていることを主治医に相談して、必要があれば薬剤の変更または減薬を行います。ポイントは、自分の判断で薬剤の服用を中止したり減薬したりしないことです。専門的な知識がないままこれらを行うと、病気が悪化する、別の副作用が現れるなどの恐れがあります。主治医の指示に従い対処することが大切です。
今日から自分で始められるED改善方法
ここからは自分で取り組める対処法を紹介します。
①食生活の改善
暴飲暴食を続けていると、糖尿病・高血圧・肥満のリスクが高まります。これらはEDの危険因子です。食生活が乱れている方は改善が必要といえるでしょう。基本の取り組みは、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維をバランスよくとることです。現代人の食生活は、食塩と動物性脂質の摂りすぎに陥りやすいといわれています。まずは、これらの摂りすぎを控えます。腹八分目を心がけることも大切です。何を食べればよいかわからない方は、昔ながらの和食を中心に献立を組み立てるとよいかもしれません。和食は動脈硬化の予防などに効果的です。
②運動
定期的な運動は、EDの予防や改善につながる可能性が高いと考えられています。特に効果的と考えられているのが、ジョギングやウォーキング、スイミングなどの有酸素運動です。ただし、サイクリングには注意が必要です。結論は出ていないものの、サドルで会陰部を圧迫するため、EDに悪影響を及ぼすとする意見もあります。この点が心配な方は、他の運動に取り組むほうがよいでしょう。運動を始めるときは、体力に合わせて行うことが重要です。無理をしすぎると怪我をしてしまう恐れがあります。
③禁煙
タバコを吸っている方は、禁煙にも取り組みましょう。ニコチンの作用で、交感神経が刺激されるうえ、血流も障害されてしまうからです。喫煙期間が長くなるほど、喫煙本数が多くなるほど、悪影響を受けやすくなる恐れがあります。勃起に問題を抱えている方は、できるだけ早くタバコをやめる、やめられない場合はできるだけ本数を減らすことが重要です。
あかひげ薬局おすすめの精力剤
医療機関を受診する前に、精力剤を試してみたい方はあかひげ薬局にご相談ください。性のお悩みにあわせてさまざまな製品をご紹介できます。例えば、NEWヘヤーグロンは、男性ホルモンを配合した軟膏剤です。塗布することで、男性ホルモンの分泌不足に起因する勃起力減退などの改善を期待できます。同様に、オットピンSも男性ホルモンを配合した軟膏剤です。塗布することで、男性更年期以降の勃起力不全などの改善を期待できます。いずれも、手軽に試していただくことができます。
EDは原因を見極めて対処
この記事では、EDの原因と原因別の対処法などを解説しました。背景に病気がある場合はその治療、心理的な要因が関係している場合はストレスの解消など、薬剤の影響がある場合は減薬などが必要です。また、生活習慣の改善も欠かせません。まずは原因の見極めからはじめるとよいでしょう。精力剤を試したい方は、専門薬局として35年以上の歴史があるあかひげ薬局にご相談ください。お悩みに合わせたご提案をさせていただきます。
[1]日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/26_ed_v3.pdf
[2]浜松町第一クリニック「ED(勃起不全)有病者数調査2022」
https://www.hama1-cl.jp/internet_research/Japan_ed_population.html
[3]厚生労働省「図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-09.html
内原 茂樹 / Uchihara Shigeki
株式会社ワン・ツー創業者
あかひげ薬局創業者
<略歴>
芳香園製薬に入社し、各地支店長を歴任したのちに、独立。
1987年に愛知県名古屋市に精力剤専門店あかひげ薬局を創設。
数多くのTV・ラジオ番組に出演
「おとなの子守唄」「艶々ナイト」「今夜もハッスル」などに出演。
<主な著書>
「中高年のための気持ちいいセックス」(1997年10月、現代書林)
「誰にも聞けなかった精力剤完全ガイド」(2001年3月、現代書林)
<メディア>
・艶々ナイト(テレビ埼玉)
・今夜もハッスル(サンテレビ) 等