腟内射精障害とは
マスターベーションでは射精できるものの、セックスで膣内に挿入すると射精できない状態です(射精障害のひとつ)。本人が望んでも射精できない点がポイントといえるでしょう。意外かもしれませんが、一般的には重度の遅漏に位置付けられます。
遅漏は、本人の意に反して射精が遅れてしまう、あるいは射精そのものができない状態です。早漏よりはよいと思うかもしれませんが、不妊の原因になりうる重大な問題と捉えられています。
過去の調査では、一定の割合を占める男性不妊の原因であることがわかっています。
また女性の中には、男性が膣内で射精できないと申し訳なく感じる、挿入時間が長いと膣の周辺が痛い・体力的に厳しいと感じる方もいるようです。膣内射精障害は深刻な問題になりえます。
遅漏はパートナーにとっても重要な問題ですので、下記も合わせてご覧いただくと活用できるでしょう。
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成人男性の20人に1人が腟内射精障害
膣内射精障害に悩む男性は少なくありません。過去に行われた調査では、不妊に悩む男性の50%以上が該当すると考えられています。さらに対象を広げると、どれくらいの男性が悩んでいるのでしょうか。TENGAヘルスケアが20~70代の男性を対象に実施した調査によると「膣内では射精できない(半分程度の頻度も含む)」と回答した男性の割合は5.8%でした。この割合を成人男性全体に当てはめると約270万人になります。つまり、成人男性の20人に1人が、膣内射精障害に該当する可能性があるのです。想像以上に身近で深刻な問題といえるでしょう。膣内射精障害では、どのような症状が現れるのでしょうか。
膣内射精障害の症状
勃起に問題はないものの、セックス時に膣内へ挿入すると射精できないことが主な症状です。膣内射精障害では、基本的にオーガズムに達することもできません。
したがって、セックスの満足度は低下してしまう恐れがあります。
前述の通り、女性に負担をかけやすい点にも注意が必要です。
女性が希望する挿入時間は男性が希望する挿入時間よりも短い傾向があるため、この点を考慮しないとカップル間の問題になりえます。[1]当然ながら、妊娠を希望している場合も同様です。
ケースによっては、離婚や破局の原因になることがある点も押さえておかなければなりません。
射精障害になりうる原因
膣内射精障害は、どのような原因で引き起こされるのでしょうか。考えられる原因として、正しくないマスターベーションと心理的な問題があげられます。ここからは、射精障害を引き起こす原因について解説します。
正しくないマスターベーション
過去の研究によると、膣内射精障害の主な原因は正しくないマスターベーションです。代表的な方法として足ピン・床オナがあげられます。
TENGAヘルスケアが15~64歳の男性5,279人を対象に実施した「オナニー国勢調査(全国男性自慰行為調査)」によると、足ピン(脚をピンと緊張させた状態で行う)でマスターベーションを行っていると回答した男性の割合は8.6%、床オナ(布団や畳、床などにこすりつける)でマスターベーションを行っていると回答した男性の割合は6.35%です。多くの男性が、誤った方法でマスターベーションを行っていることがわかります。
ただし、誤った方法と気づいている男性は多くありません。その方法を第三者から学ぶことやその方法を第三者へ相談することは少ないためです。同調査によると、71.1%がマスターベーションについて「気軽に相談する相手はいない(そのような相手はいない)」と回答しています。[2]自身の方法を普通だと考えたまま、誤ったマスターベーションを行っている男性が多いと考えられます。正しくないマスターベーションの例は次の通りです。膣内射精障害でお困りの方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
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床オナ(プレス方)
床などにペニスを押し付けるマスターベーションです。押し付ける対象は床に限定されません。人によっては、布団や枕などに押し付けることもあります。
問題点は、ペニスに強力な圧力がかかることといえるでしょう。
実際のセックスでは体験できない刺激が加わるため、挿入時に満足できない原因になりえます。勃起不全(ED)の原因になることがある点にも注意が必要です。
手軽にできるため癖になりやすいですが、おすすめできるマスターベーションの方法ではありません。
強グリップ
強い力でペニスを握るマスターベーションです。具体的な力加減は人により異なりますが、正しいマスターベーションの2倍以上の力で握っていると考えられています。
この方法の問題点も、実際のセックスでは体験できない圧力がペニスにかかることです。
膣内に挿入しても十分な刺激を感じにくくなるため射精できなくなってしまいます。注意点は、強グリップも特別な準備を必要としないことです。
癖になっている方は、ダメとわかっていても行ってしまう恐れがあります。心当たりがある方は、マスターベーションの方法を改めましょう。
足ピン
足をピンと伸ばした状態で行うマスターベーションです。足を伸ばすと、勃起や射精に関わる筋肉に力が入るためオーガズムに達しやすくなります。
通常のマスターベーションよりも気持ちがよい点はメリットですが、この方法に慣れてしまうと足をピンと伸ばさないと射精できなくなることがあります。
通常のセックスで足をピンと伸ばしたままピストン運動を行うことは難しいため、膣内射精障害の原因になりうるのです。
ちなみに、特殊な体位で射精することが癖になっている場合、同様の問題を起こす恐れがあります。マスターベーション時の体位にも注意が必要です。
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高速ピストン
手を素早く上下に動かしペニスをしごくマスターベーションです。通常のセックスでは、実現不可能な刺激が加わるため膣内射精障害の原因になりえます。
注意点は、マスターベーションに熱中すると無意識で行ってしまう恐れがあることです。高速ピストンが癖になっている場合、いつの間にか手を素早く動かしてしまうことが考えられます。習慣になりやすいため、十分な注意が必要といえるでしょう。
シャンプーローション
シャンプーをローションの代わりに使用するマスターベーションです。この方法自体が膣内射精障害の原因になるとは言い切れませんが、別の問題を引き起こすためおすすめはできません。
シャンプーを塗布した状態で長時間にわたりペニスをしごくと、痛みやかゆみなどのトラブルを引き起こす恐れがあります。
石鹸やリンスなども同様です。誤った使用方法には気を付けなければなりません。
高刺激なおかず
現実ではありえないほど過激なおかずもこの問題の原因になりえます。強い刺激に慣れると、通常のセックスでは満足できなくなってしまうからです。
オンラインサービスが普及したことで、希望すれば高刺激なおかずを簡単に入手できるようになっているため注意が必要といえるでしょう。
高刺激なおかずは、膣内射精障害だけでなく勃起不全(ED)の原因にもなりうると考えられています。
膣内射精障害に限らず、射精障害に成りうる原因はマスターベーション以外にもあります。
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心因性の要因
正しくないマスターベーションほど割合は高くないものの、心理的な問題も膣内射精障害の原因と考えられています。その理由は、勃起と射精の仕組みを理解するとわかります。
勃起と射精は、副交感神経と交感神経で構成される自律神経がコントロールしています。副交感神経はリラックスしているときに働く自律神経、交感神経は活動しているときに働く自律神経といえるでしょう。勃起をコントロールしているのは副交感神経、射精をコントロールしているのは交感神経です。したがって、不安を抱えていたり緊張していたりすると勃起しにくくなります。同様に、副交感神経から交感神経へうまく切り替えられず射精できないことも考えられます。
では、どのような出来事が心理的な問題になりうるのでしょうか。具体例を紹介します。
【例】
- パートナーから性行為について心無い言葉をかけられた
- 性行為の経験が不足しているため自信がない
- 子どもができると困ると感じている
- 幼少期に性行為は不潔なことと教えられた
- 膣内で射精できなかった(次は早く射精しなければならないと焦る)
ただし、全ての方が原因になっている心理的問題を自覚できるわけではありません。本人も気付いていない出来事が原因になっているケースもあります。
腟内射精障害の治療
膣内射精障害の改善策として以下の3つがあげられます。
【改善策】
- 適切なマスターベーション
- セックスカウンセリング
- 薬物治療
各方法について解説します。
適切なマスターベーション
前述の通り、膣内射精障害の主な原因は正しくないマスターベーションです。やり方を改めることで状況を改善できる可能性があります。ここからは、マスターベーションの方法を紹介します。
低握力スラスト運動
実際の性行為に近い刺激を再現する方法です。正しくない方法が身についていると刺激が足りないと感じるかもしれませんが、少しずつ慣らしていくことが大切といえるでしょう。基本の取り組み方は次の通りです。
【取り組み方】
- 体軸とペニスの位置関係は垂直を意識する(足はピンと伸ばさない)
- ペニスを手で優しく握る
- 性行為と同程度のスピードで手を動かす
ペニスを握る力は、鶏卵が割れない程度といえるでしょう。膣の締めつけをイメージすると実際の性行為を再現しやすくなります。おかずの選び方にも注意が必要です。非現実的なおかずを選ぶと、実際の性行為で興奮しにくくなってしまいます。現実感のあるものや妄想などを活用しましょう。マスターベーションの頻度は週に数回が目安です。
セマンズ法・スクイーズテクニック
いずれも、射精に至るタイミングのコントロールを目指すトレーニングです。主に早漏の治療で行われますが、射精に至るタイミングを早めることも可能です。基本的には、パートナーの協力を必要とします。それぞれの取り組み方は次の通りです。
【セマンズ法】
- パートナーに手でしごいてもらう
- 射精しそうになったら手の動きをとめてもらう
- 射精感がおさまるまで我慢する
- 1~3を繰り返して4回目で射精する
【スクイーズテクニック】
- パートナーに手でしごいてもらう
- 射精しそうになったら、亀頭と包皮小帯(裏筋部分)を手で圧迫してもらって我慢する
- 射精感がおさまったら再び手でしごいてもらう
- 1~3を繰り返してから射精する
ポイントは、射精に至るタイミングを早めるように意識することです。タイミングをコントロールできるようになったら、実際に挿入して同じ要領でトレーニングを繰り返します(スクイーズテクニックは射精しそうになったら手で圧迫)。
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マスターベーションエイド
膣内に近い環境を再現したトレーニングツール(カップ)です。TENGAヘルスケアが販売しています。刺激の強い順にLv1~Lv5+TIMING TRAINER-FINISH-で構成されます。膣内射精障害患者を対象にマスターベーションエイドを用いた射精リハビリテーションをおこなったところ、75%は同製品を用いたマスターベーションが可能になり、うち31%は膣内での射精が可能になりました。 [3]トレーニング方法は次の通りです。
【使い方】
- Lv2で1・2回目、Lv3で3・4回目、Lv4で5・6回目、Lv5とTIMING TRAINER-FINISH-で7~10回目のトレーニングを行う(Lv1は使用しません。Lv2~4は射精できなくても次のレベルへ進みます)
- 1のトレーニングを週1~2回のペースで行う
各トレーニングでは15分以内の射精を目指します。Lv5で15分以内に射精できればトレーニングは終了です。膣で射精できない場合は、同製品をクッションなどに固定して、実際の性行為と同じように腰を振って射精できるようにトレーニングします。[4]
コンドーム・マス法
コンドームを使って、膣とよく似た環境を再現する方法です。具体的には、以下の方法で行います。
【取り組み方】
- ペニスを勃起させてコンドームを装着する
- 手で刺激を加えてカウパー腺液を分泌させる
- コンドーム内にカウパー腺液を広げる
- ペニスを優しく握る
- 性行為と同程度のスピードで手を動かす
手元にローションがある場合は、カウパー腺液の代わりに使用しても構いません。コンドーム内のヌメリを楽しむように優しく行うことが大切です。
アダルトコンテンツの視聴を控える
上記の対策と並行して、アダルトコンテンツの視聴を控えることも勧められます。過激な内容のものが多いため、実際の性行為で興奮しにくくなる恐れがあるためです。アダルトコンテンツで欲求を満たすと、性行為に対する興味が薄れることも考えられます。アダルトコンテンツをおかずに使用するときは、実際の性行為に近いものを選びましょう。
飲酒を控える
性行為前の飲酒を控えることも大切です。お酒を飲みすぎると、中枢神経が麻痺して射精の命令をうまく伝えられなくなる恐れがあります。それどころか、勃起そのものが難しくなることも考えられます。お酒を飲むときは適量を心がけましょう。適度な飲酒は、リラックスを促します。緊張を和らげられるため、遅漏の改善に役立つかもしれません。適量には個人差がありますが、厚生労働省は平均的な日本人における適量(節度ある程度な飲酒)を1日平均純アルコールで約20gとしています。[5]
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セックスカウンセリング
膣内射精障害の原因は、正しくないマスターベーション習慣だけではありません。心理的な問題を含むさまざまな原因でも引き起こされます。
また、膣内射精障害で悩み、問題が複雑化することもあるでしょう。
したがって、専門家によるセックスカウンセリングも有効な治療法と考えられています。セックスカウンセリングは、パートナーと一緒に行うこともあります。
薬物治療
必要性が認められる場合は薬物治療も行います。用いられる薬物はケースによりさまざまです。
いわゆるED治療薬を用いることもあれば、漢方薬などを用いることもあります。
いずれにせよ、医師とよく相談したうえで、医師の指示に基づき正しく服用することが重要です。
【参考】その他の射精障害
ここからは、膣内射精障害・遅漏以外の射精障害を紹介します。
早漏
本人やパートナーの意に反して射精してしまう状態です。具体的には、性行為を行うたびに、またはこれに近い頻度で、挿入前または挿入後1分以内に射精してしまい、本人とパートナーが悩んでいる状態を指します。早漏の主な原因は次の通りです。
【原因】
- 刺激に対して敏感すぎる
- 心理的な問題(不安や緊張など)
- 加齢の影響(筋力や男性ホルモンの低下)
包茎の方や性行為の経験が乏しい方などは問題を抱えやすいといえるでしょう。具体的な対策として、射精トレーニング、局所麻酔薬を配合した薬剤の使用、厚手のコンドームの使用などがあげられます。
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神経性射精障害
何かしらの理由で、射精に関わる神経がダメージを受けて射精できない状態です。原因として交通事故による脊髄損傷、手術の影響などがあげられます。残念ながら、神経のダメージを回復させることは難しいと考えられています。ただし、子づくりが不可能になるわけではありません。精巣から精子を取り出して体外受精を行えます。ケガなどから時間が経過すると、精子をつくる機能が低下する点には注意が必要です。
逆行性射精障害
射精時に精子が逆流してしまう状態です。具体的には、体外ではなく膀胱へでてしまいます。すべての精子が逆流するとは限らないため、体外へでる精子が極端に少ない場合も疑われます。主な原因は糖尿病による神経障害といえるでしょう。これにより、本来であれば射精時に閉じなければならない膀胱の出口が開いて逆流を許してしまいます。逆行性射精障害は薬剤で治療できる場合があります。糖尿病が原因の場合は、そのコントロールも大切です。
膣内射精障害でお困りの方はあかひげ薬局まで
この記事では、膣内射精障害について解説しました。
パートナーとの不和や男性不妊の原因になりうるため注意が必要です。医薬品等の治療について相談したい方は、35年以上の実績がある「あかひげ薬局」にご相談ください。
[1]出典:TENGA HEALTHCARE「セックスの理想の挿入時間は何分か?挿入時間から早漏/遅漏を考える」
https://tengahealthcare.com/column/post-1042/
[2]出典:TENGAヘルスケア「オナニー国勢調査(全国男性自慰行為調査)」
https://tengahealthcare.com/special/report/#file03
[3]出典:J-STAGE「膣内射精障害患者に対するマスターベーションエイドを用いた射精リハビリテーション」獨協医科大学越谷病院泌尿器科
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol/103/3/103_548/_pdf
[4]TENGA HEALTHCARE「膣内射精障害・遅漏の新しい改善方法 | TENGAヘルスケア メンズトレーニングカップキープトレーニング」
https://shop.tengahealthcare.com/chirou_1?ad_code=na_gad_mtc_yukaona&gad=1&gclid=Cj0KCQiAgK2qBhCHARIsAGACuzlNWMgft5aoCYmX5QwrxHHxeNKuWzTh3vJFyFFXZ5QR5Mj1NNDdkx0aAjGgEALw_wcB
[5]厚生労働省「アルコール」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html
内原 茂樹 / Uchihara Shigeki
株式会社ワン・ツー創業者
あかひげ薬局創業者
<略歴>
芳香園製薬に入社し、各地支店長を歴任したのちに、独立。
1987年に愛知県名古屋市に精力剤専門店あかひげ薬局を創設。
数多くのTV・ラジオ番組に出演
「おとなの子守唄」「艶々ナイト」「今夜もハッスル」などに出演。
<主な著書>
「中高年のための気持ちいいセックス」(1997年10月、現代書林)
「誰にも聞けなかった精力剤完全ガイド」(2001年3月、現代書林)
<メディア>
・艶々ナイト(テレビ埼玉)
・今夜もハッスル(サンテレビ) 等