女性もバイアグラを服用可？期待できる効果と理解しておくべき安全性

ファイザー製薬が1998年からアメリカで販売を開始した世界初のED治療薬です。日本では1999年から販売が開始されています（2021年9月1日から製造販売承認および販売はヴィアトリス製薬に移管）。ED治療薬として知られていますが、もともとは狭心症の治療薬として開発を進められていました。本来の目的では十分な効果を確認できなかったものの、勃起をサポートする働きが確かめられたため、この目的で開発を進めることになりました。

バイアグラは、PDE5阻害薬というグループに分類されます。PDE5は、サイクリックGMPという物質を分解する酵素です。サイクリックGMPは、平滑筋の弛緩や血管の拡張などに関与しています。したがって、この物質が分解されると、ペニスの血管が収縮して勃起を維持できなくなってしまいます。PDE5阻害薬は、名称からわかる通りPDE5を阻害して、サイクリックGMPの分解を防ぐ薬剤です。バイアグラは、以上の働きによって勃起をサポートします。効果が現れる時間は服用30～60分後程度です。ヴィアトリス製薬は、性行為1時間前の服用を推奨しています。ただし、食後に服用すると効果が現れるまで時間がかかります。

バイアグラの対象は勃起不全に悩む男性と考えられます。勃起不全は、十分な勃起を得られないため、または勃起した状態を維持できないため、満足な性行為を行えない状態です。ただし、心血管系障害がある方や重度の肝機能障害がある方、低血圧の方、治療で管理していない高血圧の方、一部の薬を服用している方などはバイアグラを使用できません。勃起不全に悩んでいる場合も、個人輸入などには頼らず医師に相談してから服用することが大切です。

バイアグラを服用したいと考える女性やバイアグラを服用させたいと考える男性がいるようです。女性が服用しても一定の効果を期待できるのでしょうか。

バイアグラを服用すると血流がよくなります。これにより、女性器周辺の神経が過敏になる可能性は指摘されています。また、服用の事実による、あるいは作用の理解によるプラセボ効果も期待できるでしょう。プラセボ効果は、効果のない偽薬によって得られる効果です。ただし、これらの働きを裏付ける医学的な根拠はありません。

ファイザー製薬は、FSAD(女性の性的興奮障害)に悩む女性を対象にバイアグラの有効性を確かめる研究を実施しています。FSADは、性的な刺激による興奮を得られない、または持続できない状態が続くことによる苦痛です。本研究でFSADに対する有効性は認められませんでした。ファイザー製薬は、規制当局への申請を見送っています。[1]

また、自然閉経後の女性を対象に、シルデナフィル（バイアグラの有効成分）が子宮・陰核（クリトリス）動脈血流に与える影響を調べる研究も行われています。同研究で、性的刺激とは無関係に子宮と陰核の血流を改善することが確かめられました。[2]ただし、これをもって女性の性的問題を解決できるといえるわけではありません。

以上をもとに考えると、現在のところ女性に対する効果は認められていないと結論づけられるでしょう。一部で噂されている感度が向上するなどの意見に医学的な根拠はありません。

前述の通り、バイアグラは勃起不全に悩む男性を対象とするED治療薬です。この目的で研究・開発が進められたため女性に対する安全性は確立されていません。男性が服用したときに想定される主な副作用は「ほてり・潮紅」と「頭痛」です。また、「胸痛・動悸・頻脈」「めまい・傾眠・昏迷」「悪心・胃腸障害・口喝・消化不良」「鼻炎」「関節痛・筋肉痛」「発疹」「眼充血・結膜炎・彩視症」などの症状が現れることもあります。

女性も同じではと考えるかもしれませんが、そうとは言い切れません。性別が異なれば効果も異なることが少なくないためです。具体的には、男性よりも効果が持続する時間が長くなる、副作用が強く現れるなどが考えられます。ただし、これらについても可能性を示しているだけです。女性を対象とする臨床試験は行われていないため、具体的な効果や副作用の現れ方はわかりません。想定外の影響が現れることも考えられます。女性の服用は、基本的に避けるべきといえるでしょう。

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勃起不全に悩む男性を対象とするため、医師が女性に処方することはありません。男性から譲渡してもらえばよい、あるいは男性が女性に譲渡すればよいと考えるかもしれませんが、これらの方法は控えるべきといえるでしょう。医師が処方した薬を他人に譲り渡すと、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律（医薬品医療機器法）などに抵触して、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科される恐れなどがあるためです。

個人輸入にも十分な注意が必要です。ファイザー株式会社・日本イーライリリー株式会社・バイエル薬品株式会社・日本新薬株式会社が2016年に合同で実施した「偽造ED治療薬調査2016年」で、インターネットで入手したED治療薬の約4割（35.6％）が偽造品だったためです。タイ発注分における偽造品の割合は約5割（48.0％）となっています。[3]偽造品の中には、不衛生な環境・方法で製造されたものも混ざっていると考えられています。リスクを伴う購入方法であることを理解しておかなければなりません。個人輸入も基本的に避けるほうがよいでしょう。

日本国内で製造販売の承認を受けているED治療薬は次の3種類です。

【種類】

• バイアグラ（有効成分：シルデナフィル）
• レビトラ（有効成分：バルデナフィル）
• シアリス（有効成分：タダラフィル）

レビトラ・シアリスも、PDE5阻害薬に分類されます。これらも、バイアグラと同じく勃起不全に悩む男性を対象とするED治療薬です。したがって、女性に対する安全性は確立されていません。想定外のトラブルが考えられるため、女性は服用を避けるべきといえます。ちなみに、医薬品の譲渡や個人輸入に関しても考え方はバイアグラと同じです。推奨できる行為ではありません。

女性用バイアグラといわれている医薬品として「ADDYI」があげられます。ADDYIは、アメリカの厚生労働省にあたるFDAが2015年に認可した性的欲求低下障害の治療薬です。有効成分フリバンセリンの働きで性的欲求を増強します。ただし、長期間の服用を必要とするうえ、効果の現れ方にも個人差があります。また、重篤な副作用が起こりやすいため、アメリカでも専門医でないと処方できません。

よく似た医薬品として、2019年にFDAから承認された閉経前における性的欲求低下障害の治療薬「Vyleesi」もあげられます。性行為の45分前に自己注射することにより性的欲求を改善できます。ただし、こちらも吐き気などの副作用が起こりやすいとされています。

これらの医薬品は日本国内未承認です。自由診療で処方しているクリニックは少ないでしょう。現実的な入手方法は個人輸入と考えられますが、副作用や偽造品のリスクなどを考えると推奨はできません。他の方法を模索するほうが無難です。

ここでは、女性とバイアグラについて解説しました。勃起不全に悩む男性を対象とするため女性に対する安全性は確立されていません。また、期待できる効果も不明です。入手方法は男性からの譲渡または個人輸入になると考えられますが、譲渡には法律違反、個人輸入には偽造品などのリスクが伴います。女性の服用は、メリットよりもデメリットのほうが大きいといえるでしょう。何かしらのお悩みを抱えている場合は、女性向けの精力剤を利用することもできます。安全かつ手軽な方法から試してみてはいかがでしょうか。 精力剤専門の薬局として豊富な実績があるあかひげ薬局にぜひご相談ください。

出典：[1]National Center for Biotechnology Information「Pfizer will not apply for a licence for sildenafil for women」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC381039/
出典：[2] National Center for Biotechnology Information「The Effect of Sildenafil Citrate on Uterine and Clitoral Arterial Blood Flow in Postmenopausal Women」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1480594/
出典：[3]ファイザー株式会社 バイエル薬品株式会社 日本新薬株式会社 日本イーライリリー株式会社「偽造ED治療薬4社合同調査結果」
https://www.nippon-shinyaku.co.jp/file/download.php?file_id=125